骨転移を調べる「骨シンチグラフィー」の仕組みや検査の時に気をつけることを紹介します。[/say]
核医学検査って何?
骨シンチ検査は、病院で行われる核医学検査の一つです。
放射性医薬品の一例をあげてみます。
喉(のど)にある甲状腺は、甲状腺ホルモンを作り出す大事な働きをしています。
甲状腺は、体内にあるヨードを材料にして甲状腺ホルモンをつくりますが、甲状腺の機能が強すぎるとバセドウ病などの甲状腺機能亢進症になり、弱すぎるとクレチン症や甲状腺炎などの甲状腺機能低下症を引き起こします。
そこで、ヨードにRIをくっつけた放射性薬剤を使います。体内に投与された放射性薬剤は、時間とともに甲状腺に集まります。
その様子を特殊なカメラで撮って画像にすることで、集まったヨードの分布や量を調べることができます。(甲状腺シンチ)。
甲状腺の形は他の検査でもわかりますが、どの程度働いているか(成分が代謝されているか)を知ることができるのは、核医学検査だけです。
この様に核医学検査は、臓器の形ではなく、機能を調べる事ができる検査です。
レントゲン、CT、MRI、エコーなどが形態画像検査と呼ばれるのに対して、核医学検査は機能画像検査と呼ばれます。
骨シンチはどんな検査なの?
骨シンチグラフィの名前の由来
まずは名称から。骨シンチの「シンチ」はシンチグラフィの略称です。
正式には骨シンチグラフィと呼ばれます。 核医学検査では、必ず○○シンチグラフィとなります。
シンチグラフィってどういう意味なんですか?[/say]
核医学検査では、SPECT装置というものが使われます。 Single photon Emission Computed Tomographyの頭文字をとっています。
Single Photonというのは、使用される放射性核種の原子核が1崩壊ごとに1つの放射線を出すことからきています。
Computed Tomographyはコンピューターを使って断層像をつくる仕組みからきています。
体の中から出てきた放射線は、装置にあるシンチレータという結晶にあたり、そこで光に変換されます。
その光はPMTと呼ばれる増幅器で増幅されて電気信号に変えられます。その信号をコンピューターで解析して画像を作り出します。
骨シンチの仕組み
骨シンチの主な目的は、骨転移や炎症の有無を調べることです。
放射性薬剤として、骨の主成分であるハイドロキシアパタイトに似た化合物に99mTcというRIを結合させたものを使います。
放射性薬剤は、血管内に注射され、その後約2時間で骨に集まります。
どうして、骨の成長が止まっている大人でも骨に集まるの?
骨は、成長期にしか作られないと思われがちですが、実は大人でも常に作られています。
骨には、骨を作り出す造骨細胞と骨を壊す破骨細胞があります。
子供でも大人でも、この2つの細胞が常に骨を作り、同時に壊しています(リモデリングと呼ばれます)。
成長期は成長端での造骨細胞の働きが強いため骨がどんどん増えていきます。
それに対して大人では、作る量と壊す量がほぼ同じため骨が増えることはありません。しかし、中身は常に新しいものに入れ替わっています。
じゃあ、注射して2時間くらいで撮影できるの?
2時間後でも検査はできますが、よりきれいに撮るためにもう少し時間をあけてから検査を行います。
放射性薬剤は約2時間で骨に集まりますが、毛細血管や細胞の隙間にも入り込みます。
この状態で撮影すると骨と重なってしまって骨がきれいに見えません。
時間が経つと骨に取り込まれた放射性薬剤以外は尿になって排出されます。そうすることで、骨がくっきりと見えます。
そのため、注射してから3~4時間後に撮影するのが一般的です。
検査時間はどのくらいかかるの?
撮影は、全身、胸、腹の撮影を基本として、必要であれば斜めからとったり、手足だけを別に撮ったりします。
40~60分くらいが検査の目安となりますが、もっと長くなることもあります。
検査費用はどれくらい?
骨シンチに使う放射性薬剤は、いくつかあります。また、院内で調剤するか、完成品を購入するかで請求額が多少違います。
一般的な例では、放射性薬剤が約30000円、撮影は2200点(=22000円)、その他管理加算など1000点(=10000円)となり、合計62000円程度です。
3割負担だと約20000円となります。
検査の前に気をつけることはありますか?
注射までに気をつけることは特にありませんが、注射した後は体内から微量の放射線がでています。
その日は小さなお子さんを抱っこしたりするのは避けください。
また、検査直前には排尿が必要になります。
これは膀胱に排出された薬が画像に写ることを避けるためと、膀胱に溜まったRIからの被ばくを減らすために必要です。
そのときに下着や衣服に尿が付着しないように気をつけてください。付着してしまうと画像に写りこみ病変なのかどうか見分けがつかなくなります。
場合によっては、衣服を着替えて再撮影になることがあります
でも、放射線を使うんでしょ・・・ちょっと怖いなぁ
放射線と聞くと怖いイメージがありますよね。
確かに放射線と聞くと怖いイメージがあるかもしれません。
でも医療で使われている放射性核種は半減期が短く、エネルギーが低いものが使われています。
核医学検査で使われる放射性核種は、kr(13秒)、99mTc(6時間)、123I(13j時間)、201TL(73時間)と半減期が短いものが使われています。
また、半減期やエネルギーが高いものは被ばくを考慮して、より少ない量しか使われません。
このように被ばく量がしっかり管理されていますので、安心して検査を受けられます。
レントゲンの被ばく量との比較
レントゲンは外部被ばくであり、核医学でのRIによる内部被ばくと、一概に比べられませんが、参考値としては
胸部レントゲン:0.1~0.3mGy
骨シンチ:成人量740MBq
全身:2.38mGy
骨:10mGy
膀胱:12.18mGy
※内部被ばくはRIの集まる場所や排泄経路によって違います。骨シンチに使われる放射性医薬品は最終的に尿中に排泄されるため膀胱の被ばくがもっとも高くなります。
いずれも、健康には問題ないレベルの被ばくです。
でも、放射線は浴びないほうがいいんでしょ?
確かにそのとおりです。だから医療被ばくにはルールがあります。
被ばくの正当化
微量の放射線は健康にはなんの問題もありません。しかし、浴びるよりは浴びないほうが安全です。浴びるメリットは何もないからです。
ですから何の理由もなく放射線を浴びることは、避けなければなりません。
しかし、医療による被ばくは違います。検査によって、異常の有無がわかるというメリットがあるからです。
メリットがデメリットを上回るかどうかは検査を依頼する主治医が判断をします。もちろん患者さんの同意も必要です。
骨シンチ検査のことがよくわかりました。放射線被ばくも心配ないんだね。ところでどんな写真がとれるの?
これが、骨シンチの写真です。
うわぁ・・・(怖)[/say]
骨シンチ用の放射性薬剤は骨に取り込まれるので、骨だけが見えてきます。
血液からろ過された薬剤は尿になって腎臓から膀胱に運ばれます。そのため尿路や膀胱内の尿(薬剤)も写ります。
胸の辺りに黒い点がたくさんあるのが、病変です。
全部、癌の転移なの?
黒く写っている所すべてが癌(病気)ではありません。
骨シンチで使われる放射性薬剤は転移した癌に集まるわけではなく、あくまでも骨の材料としてとりこまれます。
骨への薬の取り込み具合から病変を見つける
癌が転移すると、癌細胞が増殖して、骨がどんどん作られていきます。そのとき、他の場所よりもRIがとりこまれる(集まる)ため、黒く写ってきます。
しかし、骨がどんどん作られるのは癌の転移だけではありません。
例えば、骨折した場合、骨はどんどん修復されていきます。そのため、放射性薬剤はたくさん取り込まれて黒く写ります。
また、虫歯でも取り込みが多くなります。その他、リウマチや腱鞘炎、副鼻腔炎などでも集まります。
だから、骨シンチ検査だけで癌の転移かわからないときもあります。
骨シンチ検査だけじゃわからないこともあるんだね
骨シンチ検査では、一度の検査で全身の骨の異常を見つけ出すことができます。
その異常が骨転移とは限りませんが、もし異常が見つかれば他の検査で確認することになります。
最後に骨シンチ検査をまとめると・・・
- 放射線を出すRIを使った検査です。
- 体の代謝の状態がわかる核医学検査のひとつです。
- 骨の代謝がわかります。
- 直前の排尿がとても重要です。
- 撮影は約1時間程度かかかります。
- 癌であるかどうかはわかりませんが、何か異常があるのかがわかります。
- 放射線の被ばくは心配いりません。
となります。臨床ではとても大事な検査のひとつです。

撮影中はとても静かです。横になって寝ているだけです。寝てしまっても大丈夫ですので安心してください。
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