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【MRIの基礎原理】電磁誘導を利用したMR信号の取得のしくみ

電磁誘導を利用して体内の情報を取り出す方法を解説します。

MRI検査では、体の中の臓器や組織の情報をMR信号として取り出して、画像を作ります。

MR信号はどうやって取り出すの?

MR信号は「電磁誘導」という現象を利用して取り出します。

電磁誘導ってなんだっけ?

まずは、電磁誘導のおさらいから・・・

MRIと電磁誘導

電磁誘導は、中学校の理科で習います。

実験を覚えている人も多いのではないでしょうか?

電磁誘導の実験

電磁誘導は「コイルの中で変化した磁界によってコイルに電流が流れる(誘導される)」現象です。

この映像では、銅線を巻いた筒(コイル)の中に棒磁石を入れて、動かしています。

棒磁石を動かすことで、コイルの中の磁界が変化した結果、電流が流れました。

これは、「ファラデーの電磁誘導の法則(右ねじの法則)」と知られている現象です。

(左図)コイルに磁石が近づいた時、磁石の磁場と反発する方向に磁場が発生し、その結果コイルに電流が流れます。 

(右図)コイルから磁石が離れる時、磁石の磁場を引き付ける方向に磁場が発生し、その結果コイルに電流が流れます(近づいた時と反対の方向に流れる)。

これが、電磁誘導です。

ここでのポイントは以下の2つです。

ポイント

1.磁石を動かす方向でコイルに流れる電流の方向が変わる。

2.磁界の変動が大きいほど、流れる電流が大きくなる

MRI検査と電磁誘導

MRIでは、先ほど紹介した「電磁誘導」を利用して、MR信号を取り出しています。

MRI検査のときにコイルも棒磁石もなかった気がするけど・・・・

理科の実験では、コイル(銅線が巻かれた筒)と棒磁石が登場しました。

MRIではこのコイルと磁石が形を変えて登場します。

MRIで使われるコイル

電磁誘導の実験で使っていた「銅線を巻いた筒(コイル)」に相当するのは、「MRIコイル」です。

理科の実験のように銅線がむき出しではありませんが、中身は銅線が巻かれています。

これは、最もシンプルな形のMRI用のサーフェイスコイルです。整形関係の撮影でよく使われます。

少し形は違いますが、このように中身は円形に銅線が巻かれています。

こちらは、頭部の撮影に使われるHead-coilです。

見た目はわかりませんが、内部にループ状のコイルが多数配置されています。

形はさまざまですが、MRI検査では部位にあわせたコイルが使われます。

MRIで使われる磁石

それでは、磁石はどこにあるでしょうか?

棒磁石なんて検査の時に見たことないけど・・・

MRI検査の時には棒磁石は使いません。その代わりに「体内にある磁石」を利用します。

体内に磁石??そんなのないよ!?

体内のプロトンが磁石になる

その磁石とは体内にある「プロトン」です。

プロトンは、正の電荷をもつ粒子です。電荷を持つ粒子(荷電粒子)が回転することで円電流が発生して磁気モーメントが生まれます。


この磁気モーメントが「棒磁石」と同じような磁界を作り出します。つまり、体の中にあるプロトン1個1個が磁石の役目をすることになります。

詳しくは、【MRI基礎知識】プロトンの特徴と磁気モーメントが生まれる仕組みをお読みください

MRIと電磁誘導

このプロトンの作り出す磁気モーメントは、

① 静磁場内で巨視的磁気モーメントとなり、縦磁化を形成します。
② また、RFパルスによって横磁化を形成します。

この①と②の詳しい説明は、

【MRI基礎知識】プロトンの特徴と磁気モーメントの発生のしくみ
【MRI基礎知識】静磁場による巨視的磁気モーメントと縦磁化発生の仕組み

をご覧ください。

プロトンの回転運動(歳差運動)によって小さな磁界が生まれますが、回転をしているため、 (配置したコイルから見ると) 磁界の強さは変動しています。

MRIコイル内の磁界の強さが変動することによって、 電磁誘導が起きます。

この電磁誘導は、体内のプロトンが作り出しています。つまり、体内の情報をMR信号として取り出したことになります。

歳差運動によって作られる磁界は、コイル視点でみると、近づいたり離れたりしています。上記の理科の実験と同じように、磁石の動く方向で誘導される電流の向きがかわります。

それを、図で表すとこのようになります。

右側の正弦波が、いわゆる「MR信号」です。

つまり、電磁誘導を利用して、体の中の臓器や組織の情報をMR信号として取り出すことができました。

まとめ

今回は、電磁誘導を利用してMR信号を取り出す仕組みを解説しました。

プロトンの電磁誘導によって、コイルに流れる電流の強さは同じではありません。プロトンの周りの環境によって変わります。

逆に言えば、電流の強弱を利用することで、プロトンの周りの環境を知ることができ、画像化することができます。

それを利用したのがMRI画像です。その仕組みに関しては、別のページで紹介します。

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