肺血流シンチの仕組みと検査の目的

肺血流シンチとは?

肺血流シンチは、正式には肺血流シンチグラフィーと呼ばれます。

病院で行われる核医学検査のひとつです。肺の血流情報を得ることができるます。

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シンチグラフィーとは?

「肺血流」は、わかるとしても「シンチグラフィー」とはなんでしょうか?

実は、検査を行う装置に関係しています。

核医学検査では、放射性同位元素:radio isotope(RI)と呼ばれるものを利用しています。

RIからは微量の放射線が出ています。その放射線は体の外にもでてきますので、その放射線を捕らえることで画像を作ることができます。

この時、放射線を捉えて光に変える物質を「シンチレータ」といいます。シンチレータを利用した写真であるためシンチグラフィと呼ばれます。

シンチレータでできた光は光電子増倍管(PMT)と呼ばれる装置で増幅して、デジタル信号に変換されて処理装置に送られます。

核医学の検査では、この仕組みを使用してさまざまな検査を行います。

そのため骨転移を調べる骨シンチグラフィーのように、どの検査も○○シンチグラフィーと呼ばれます。(略して○○シンチと呼ばることが多いです。)

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検査はSPECT(スペクト)装置と呼ばれる専用の装置で行われます。シンチレータを体に近づけて撮影を行います。

肺血流シンチの仕組み

肺血流シンチでは、大凝集人血清アルブミン(MAA)とよばれるたんばく質の一種が使われます。

放射線をだすRIとしては、テクネチウム(99mTC)が使われMAAと標識(化学的結合)されます。

RIは静脈注射によって体内に投与されます。

体内に入ったMAAは血液の成分によって細かい粒に変わります。その粒は肺の毛細血管よりわずかに大きいため、通り抜けることはできません。

腕の静脈⇒心臓(右室)⇒肺動脈⇒肺動脈⇒肺動脈毛細血管と流れていったMAAは、毛細血管を通り抜けることができないため、そこで詰まります。

その結果、MAAは肺の血管にとどまります。その量は、血流が多い部分ほど多く、少ない部分ほど少なくなります。

そしてそこからでてくる放射線を捉えることで、肺の血流量を示す画像を作ることができます。

肺血流シンチで分かること

左右比(肺血流左右比)

肺血流シンチで重要視される情報の一つです。

正常な肺は右と左の血流量はほぼ同じです。そのため、右と左の血流の量(=放射線の量)を調べることでどちら側の肺の機能が落ちているかを知ることができます。

正面から撮った画像を解析して求めます。

血流の低下部位の特定

肺は解剖学的に多くの区域に分類されます。さまざまな角度から撮影することで、どの区域の血流が低下しているのかを知ることができます。

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肺の区域は立体的に重なっているため、正面像だけでなく、斜めから撮ったり(斜位像)、横から撮ったり(側面像)して詳しく調べます。

また、SPECTと呼ばれる撮影では、検出器が体の周り回りながら360°分のデータを集めます。集めたデータを特別な処理することで、後から任意の方向の画像をつくることができます。

これらの画像を利用して、肺の血流の低下している部分を見つけていきます。

どのような時に撮影を行うのか?

撮影の目的は病院によってさまざまですが、代表的なものを紹介します。

肺高血圧症(肺塞栓症の診断)

肺動脈の血圧が上がってしまう病気です。もともと肺動脈系の血圧は低く、血液を送り出す心臓の右心室の心筋は薄くできています。

肺動脈の血圧が上がってしまう原因はさまざまですが、血栓が原因の場合も多くあります。

静脈系の下肢や心臓でできた血の塊(血栓)が、流れていくと最終的には必ず肺の動脈にたどり着きます。

ある程度の大きさの血栓が肺動脈(毛細血管)を塞いでしまうと、その先に血液が流れなくなります。そうなると肺からもらう酸素の量が減ってしまい、それを補うために血流量が増加し、肺動脈の血圧は高くなっていきます。

高い圧力で血液を送り出すために、右心室の心筋は発達し厚くなります。厚くなりすぎた心筋は収縮や拡張する力を失うため心臓全体の働きが悪くなってしまいます。

血栓によって肺動脈が詰まっている様子は、肺血流シンチで見ることができるため、血栓が原因の血栓性肺塞栓の診断に役立ちます。

肺がんなどの腫瘍性病変

肺自体は、肺血流の他に気管支動脈からも血液(栄養)を得ています。

肺がんなど後から肺にできたものは、肺血流から栄養を貰わずに、主に気管支動脈から栄養をもらいます。そのため、その部分にはMAAは到達せず欠損した画像が得られます。

最近は、CTやMRIなどが発達し、癌などの腫瘍性病変を探す目的で肺血流シンチを行うことはなくなりましたが、切除を目的とした場合の肺の機能評価などに利用されています。

検査に関する疑問

放射線被ばくは?大丈夫なの?

RI(放射性同位元素)を使っていると聞くと、怖いイメージがでるのは当然です。

施設によって違いますが、肺血流シンチで使われる放射能量は3mCi前後です。

核医学の検査としては、かなり少ない方です。また、99mTcは、放射線のエネルギーも低めで、半減期(放射線の量が半分に減衰するまでの時間)も短いため被ばくは少ない検査と言えます。実際、健康に被害がでることはまずありません。

もちろん放射線は浴びないことに越したことはありませんが、検査によって得られる情報の価値はそれ以上です。

放射線を使った検査では、被ばくによるリスクと検査による利益を比較し利益が大きいときのみ検査を行ってよいことになっています。

MAAで肺が詰まるってしまって大丈夫?

MAAは肺の動脈に詰まることで、そこにとどまります。詰まってしまうと、それこそ塞栓病になるのではないか?と心配になりますがまったく問題ありません。

肺の毛細血管は約300億本あり、MAAが詰まるのはそのうち50万本です。

また、MAAは数時間で解け始め、24時間後には全てなくなります。

まとめ

肺血流シンチは、血流の状態をみることができる優れた検査です。

CTやMRIでは分からない情報を得ることができます。

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